NPO法人 CANVAS 石戸理事長が語る「子どもたちの創造力を育む未来の学び」

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未来をつくる子どもたちに、私たちはどんな「学び」の機会を提供できるでしょうか?ワークショップを通じて子どもたちの創造性を育てる活動をしている、NPO法人 CANVASの石戸さんにインタビューでお話を伺いました。

 

子どもたちが「新しい価値を生み出せる」教育

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MAKE2020 児島(以下:児島):よろしくお願いします。早速ですが石戸さんが理事長をされている、NPO法人CANVASの活動の概要について教えていただけますか?

石戸理事長(以下:石戸)はい。CANAVSは2002年に設立した、子どもたちの創造力や表現力を育む活動を、産官学連携で推進している団体です。

情報化社会を生きる子どもたちに必要な力は知識を詰め込み、暗記することではなく、他者と協働しながら新しいものをつくりだす力、創造力とコミュニケーション力だと思っています。だからこそ、詰め込み・暗記型ではなく、思考や創造、表現を重視する学びの場をつくっていきたいと思い、活動をしています。

 

児島:2002年からの活動というと、もう12年間になりますね!最近になって子どもたちへのプログラミング教育が話題になっていますが、先駆者として活動されていたのですね。

石戸:そうですね。私たちは、造形、デザイン、映像、音楽、身体、デジタル、環境、サイエ ンス、数、ことば、国際交流、ネチケット、食など様々な分野のワークショップを提供しています。その中でプログラミングワークショップも設立当初から開催してました。しかし、以前は、プログラミングのワークショップはどちらかというと人気がなかったです(笑)造形やクレイアニメの方が人気が高かったです。ところが、ここ1〜2年で急速にプログラミングの人気が高まっていますね。

 

きっかけはMITメディアラボでの学び

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児島:そもそも石戸さんが、CANVASの活動を始めたきっかけは?

石戸:CANVAS設立前に所属していた MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボで学んでいたことが大きなきっかけでした。メディアラボは「デジタルの恩恵を一番受けるのは途上国と子どもたちである」という考え方を持っていて、子どもとデジタルの関係を総合的に研究しているラボでもあったのです。世界中のこどもたちに100ドルのパソコンを配って学習の機会を提供するOLPCもメディアラボの活動です。それらの考えに影響を受け、CANVASを立ち上げました。

 

児島:CANVAS設立当時の2002年頃だと、そういった活動をしている人は少なかったですよね。

石戸:その当時ですと、「そもそもNPOって何?」「ワークショップって何?」という雰囲気でしたね。2014年8月29日〜30日で行われた ワークショップコレクションは10回目ですが、その当時に行われた初回は半日で500人の来場者数でした。それが、去年の9回目では二日間で10万人が来場するイベントになりました。

 

児島:二日間で10万人!それはすごい人数ですね!

石戸:はい。保護者の方々の「新しい学びの場」への関心の高まりが、その数にも表われているのだと思います。

 

本来は学校教育の中にあるべき創造的な学び

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児島:世の中の状況が、今になって石戸さんの先進的な取組みに追いつき始めてますね(笑)世の中の状況が劇的に変化する中で、教育の変化はこれまで少なかったように思えます。

石戸:MITメディアラボのシーモア・パパート教授が「19世紀の外科医が現在の手術室にやって来ても何一つ仕事ができないだろう。でも、19世紀の教師がやって来たら、きっと何とかやっていけるだろう。教授法はこの150年で変化していないからだ。」とおっしゃっていました。でも同時に同じくメディアラボのミッチェルレズニック教授は「最新のデジタル技術が、こどもたちの学び方、教育を抜本的に変える。デジタル革命は世界規模の学習革命を必要とし、またそれを可能にする。」といっていました。

新しいテクノロジーが出てきたからこそ、学びは変わらなければならないし、テクノロジーが学びを変えてくれる可能性があるのだと思います。もちろん、テクノロジーはツールに過ぎませんが、学びを変えるきっかけになると思います。

 

児島:今の学校教育で手が届かないところを、CANVASの活動が上手く補完しているのですね。

石戸:私たちは全ての子どもたちに、創造的な学びの機会を提供したい、という想いで活動を始めました。本当は学校の中でやりたいですよね。ただ、立ち上げたばかりのNPOがいきなり学校教育の中で行うのは難しかったので、まずは課外活動としてやってきました。ただ、最近ではひとり1台情報端末を持って学ぶデジタル教科書の話がでてきました。やっと、これまで10年以上取り組んできたことが学校でもできるようになるのだと捉えています。

 

教える大人も子どもと一緒にワクワク楽しく

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児島:これまで先駆者として活動してきて、多くの困難があったと思います。それにも関わらず10年以上変わらず続けてきたモチベーションは何だったのでしょうか?

石戸:それは楽しかったからですね。私たちは「遊びと学びの秘密基地」というコンセプトを持っています。人間の学びを本来の楽しい、知的探求の活動として取り戻したい、そう願っているからです。

本来「学び」と「遊び」は一緒であったはず。実際、子どもたちは、日常生活の中で、公園での遊びの中で、実にたくさんの生きる力を、遊びを通じて学んでいます。そして何よりも、新しいことを発見すると、本当にうれしそうな顔をします。そしてこどもたちはどこでも遊び、どこでも学びます。家でも公園でも空き地でも道路でも。押し入れでもキッチンでも物置でも。全ての空間がこどもたちにとってはラボなのです。ここを押すとどうなるのだろう?これをつなげるとどうなるのだろう?たくさんの実験をして、たくさんの試行錯誤をして、たくさんのことを学んでいるのです。

子どもは絵を描くのも本を読むのも、それが楽しいからする。人にとって、学ぶことと生きることと同じ。日本には、日常の中で学びを楽しむという文化がありました。俳句などがその典型です。ところが、いつの間にか、学びと遊びが分かれ、学びには苦痛が伴い、楽しみが失われていきました。人間の学びを本来の楽しい知的探求の活動として取り戻したいと思っています。「好きこそものの上手なれ。」と言いますが、楽しい!と思う心こそが学びの原動力なのです。私たちができることは、子どもたちが、ワクワク夢中になれる環境を用意することです。そのためには、私たち自身が楽しむことが大事だと考えています。

 

児島:素晴らしいです!大人がワクワクして楽しみながら教えていると、子どもたちにも学ぶ楽しさが伝わりますよね。

石戸:はい。子どもたちは大人をよく見ているので、大人の雰囲気はすぐ伝わりますよ。

スマートフォン・タブレットで広がるデジタルの学び

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児島:2014年8月29日〜30日で行われるワークショップコレクションは10回目ですね。過去10回の中で、ワークショップコレクションの大きな変化はありますか?

石戸:ワークショップコレクションは「つくる」ということを大事にして、すべてのワークショップが創作・コミュニケーション型です。しかしプログラムの種類は様々で、造形、絵画、サイエンス、電子工作、音楽、身体表現、映像、環境・自然と分野も幅広くあります。ここ数年の変化としては、プログラミングや3Dプリンター、ロボットなどのデジタルの学びが多くなってきた傾向はあります。

 

児島:なるほど。最近ですとワークショップコレクションに来場する子どもたちの年齢は何歳ぐらいが多いですか?

石戸:未就学児から、小学校4年生ぐらいが特に多いですね。

 

児島:その、未就学児から小学校4年生ぐらいまでの子どもたちの、どの年代においても、デジタルの学びへの関心は増えていると思いますか?

石戸:はい。増えていると思います。なぜデジタルの学びへの関心が増えたかというと、スマートフォンやタブレットがより子どもや保護者にとって身近になったからだと思います。

 

児島:ここ数年で子どもたちが自然にスマートフォンやタブレットに触れる環境が急速に出来きたのですね。

石戸:はい。子どもたちにとっては、粘土やクレヨンに加えて、スマートフォンやタブレットが自然にある環境になっていると思います。

 

日本全国100箇所以上で開催する「クリエイティブキッズデイ」

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児島:ワークショップコレクションでは、本当に多くの数のワークショップを用意していますよね。

石戸:本当はもっと置きたいです(笑)

児島:もっとあるんですね(笑)

石戸:はい(笑)数を目標にしていたわけではないですが、去年10万人を達成しました。そして1箇所での開催では10万が限界だなとも感じました。もともと全ての子どもたち学びの機会を提供したいという想いではじめたワークショップコレクションですので、ワークショップコレクションにあわせて、全国で同時にワークショップを開催することで、日本中で盛り上げていきないだろうか?と考えました。そこで、今年からクリエイティブキッズデイという企画を始めました。子どもたちの「創る」を応援する年に1度のお祭りをつくりをつくろうということです。今年は北海道から沖縄まで、全国から約150のワークショップが参加してくれました。愛知ではワークショップコレクションと同じ日に、24のワークショップが一同に集うワークショップギャザリングが開催されています。

 

児島:全国の100を超えるワークショップの開催となると、本当に多くの方の協力が必要になりますね。

石戸:そうですね。私たちも10年以上の活動の中で、本当に多くの方の支援と協力を頂いてきました。それが子どもたちが持っている力なのだと思います。子どもたちには、「求心力」があります。

 

児島:「求心力」ですか?

石戸:はい。子どものためだったら、何かしてあげたいと思う大人がたくさんいます。子どもたちは、たくさんの大人を巻き込むことができるのです。

 

 

プログラミング学習普及プロジェクトPEG

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児島:素晴らしいです!それにしても、100箇所とは凄い…。最近はプログラミングのワークショップに力をいれていますよね。

石戸:はい。プログラミングワークショップは設立当初から取り組んでいましたが、2012年の夏からは、主に宮城を舞台として、「プログラミングワークショップin東北」を展開しています。

開催した場所は、宮城県石巻市、気仙沼市、多賀城市、七ヶ浜町、亘理町、仙台市の各教育施設です。約半年の間に総勢で560名の子どもたちが参加しました。東北の被災地の大人の方々から、「地域の人材を育成していくことが、ひいては被災地の復興につながるので、ぜひ被災地を重点的にして開催して欲しい」というご意見をいただいたことがきっかけで、被災地を中心にプログラミングワークショップを開催してきました。

その活動がきっかけとなり、2013年10月頃にはGoogleのエリック・シュミット会長と共同記者会見をして、googleさんの支援のもと今年1年で2万5千人の子どもたちにプログラミング学習を届ける PEG(programing-education-gathering )というプロジェクトを始めました。それから全国でプログラミング学習を提供しています。

 

児島:本当にすごいですね!石戸さんの想いによって、全国の子どもたちまで学びの機会が届いていますね。

石戸:もっと多くの子どもたちに届けたいです(笑)

 

 

海外の子どもたちにも先進的なICT教育を

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児島:今後、未来に向けて取組みたいことはありますか?

石戸: CANVASが次の10年でやりたいプロジェクト10本というのを10周年を迎えた年に書きました。

1.CANVAS テーマパーク会館オープン

  1. ワークショップコレクション海外展開
  2. 世界一の保幼小中を設立
  3. デジタルランドセルの普及と学校での創造表現力教育の教科
  4. 創造メソッドの国際標準モデルづくり
  5. 子どもの党の結成
  6. 子どもがまちをジャック
  7. 子ども商品開発ラボスタート
  8. バーチャル子ども美術館設立
  9. 公園デジタル遊具・デジタル toy開発

 

児島:素晴らしいです!特に2020年頃に向けた取組みはありますか?

石戸:日本の先進的な学びやワークショップコレクションを、積極的に海外にも展開していきたいですね。

 

児島:日本だけではなく、世界中の子どもたちに提供するビジョンをお持ちなのですね!

石戸:もちろん一歩一歩、できる事からですけどね(笑)

 

 

頭で考えカタチにする力を育む、MIT流の未来の教育

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児島:教育はなかなか変化する事が難しいというお話をお聞きしましたが、「未来の教育」のあるべき姿についてはどう思われますか?

石戸:これまでは、より多くの知識を得ることに評価の力点が置かれていました。教師が持っている知識を一方向に多数の生徒へ伝達する授業形態は、均一化された知識を身につけた人材が必要な工業社会には効果的だったと思います。

でも、経済がグローバル化し、大量の情報が国境を変えて行き交う社会となった今、異質な文化、異質な価値観から構成される共同体の中で、大量の情報を取捨選択し、再構築し、新たな価値を生み出す力が求められています。多様性を尊重しつつ、個に応じた学習ができる。異なる背景や多様な力を持つ子どもたちがコミュニケーションを通じて協働し、新たな価値を生み出すことができる。そんな学びの場をつくりたいと思っています。

 

児島:本当にその通りですね。これからの日本を支える子どもたちが、世界でも活躍できる学びを提供する必要がありますね。本当にCANVASさんは子どもたち、良い機会を提供していますね。

石戸:ワークショップコレクションはきっかけを提供する場だと思っています。あくまで主役はこどもたち。私たち大人ができることは、場とツールを提供することだけだと思っています。子どもたちに新しい未来をつくっていって欲しい、そう願っています。

 


レポーターから一言

レポーター_児島

石戸さんが子どもたちへの「教育」のあるべき姿を真摯に考え、この10年以上ひたむきに活動している話をお聞きする事ができました。

私も実際に10回目のワークショップコレクションに参加して取材してきました。本当に多くの子どもたちが、そこでは、まるでテーマパークに来たように楽しみながら新しい学びと触れ合っています。

これからの未来をつくる子どもたちに多くの学びの選択肢を提供し、子どもたち自身が楽しみながら創造的に学ぶ「未来の教育」のあり方を実感することができました。

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