SVP東京代表・カタリバ常務理事の岡本拓也さんが語る「一度きりの貴重な人生の時間の使い方」

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あなたは、一度きりの自分の貴重な人生の時間を何に使いますか?

公認会計士の資格を持ち、企業再生の業務経験を経て、現在はソーシャルベンチャーパートナーズ東京(以下:SVP東京)と認定NPO法人カタリバという2つのソーシャルセクターで経営の仕事をされている岡本拓也さんにインタビューをしてきました。

 

MAKE2020 児島(以下:児島):よろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いします。

岡本拓也さん(以下:岡本):私はソーシャルセクターで2つの仕事をしています。1つめは、SVP東京の代表理事をつとめています。2つめは、認定NPO法人カタリバという団体の常務理事と事務局長をしています。

 

個人と社会企業が協働するコミュニティ

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児島:まずは「SVP東京」について、もう少し説明していただけますか?

岡本:SVP東京は「社会企業を対象としたベンチャーキャピタル」です。SVP東京の仕組みとしては個人から毎年10万円出資してもらい、さらに10万円出資した個人がチームを組んで投資協働先の社会企業に対して2年間に渡り伴走して活動します。

「早く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くへ行きたいなら、みんなで行きなさい。」というアフリカのことわざがあります。SVP東京は正にこれを体現したコミュニティで、本業をもったビジネスパーソンがお金とスキルと時間を使い社会企業と協働して、共にソーシャルセクターの発展、そして社会課題の解決に向かって活動しています。

 

対話型のキャリア教育を通じて「生き抜く力を、子ども・若者へ」

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児島:「認定NPO法人カタリバ」についても説明していただけますか?

岡本:「生き抜く力を、子ども・若者へ」を理念に、2001年から高校生に対する対話型のキャリア教育をしているNPOです。東日本大震災以後は「震災の体験を、悲しみから強さへ」をテーマに、子どもたちの放課後学校の役割を担うコラボ・スクールも運営もしています。

2001年から自己肯定感が低い高校生たちが主体的に動き始めるきっかけづくりになるキャリア学習プログラム「カタリ場」を提供していまして、今では年間約5万人の高校生に提供しています。次の一歩として高校生が自分で社会課題を解決する「マイプロジェクト」の活動や、被災地のみならず全国の過疎地域の教育課題に取り組む活動へと広げようとしています。

 

活動の原点は、学生時代にバングラデシュで出会った貧困問題を解決するマイクロクレジット

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児島:岡本さんの活動の原点は何でしょうか?

岡本:私にとっての原点は、学生時代に1年休学して海外のバックパッカーをしていた経験です。約30カ国ほど旅をしまして、たまたま立ち寄ったバングラデシュで、その後ノーベル平和賞を獲得することになったムハマド・ユヌス氏のマイクロクレジットの仕組みに出会い、感動しました。かれこれ15年以上前のことです。

それまでの私にとって「ビジネス」と「社会をより良くしていく活動」は切り離されていた印象だったのですが、そこでは見事に融合していて「貧困」という大きな課題を、金融というビジネスの仕組みによって解決する仕組みがありました。思い返すとそこでの出会いが私の原点です。

 

ただ海外を旅をする中で、まず「自分自身に力をつけたい」とも考えていました。そのきっかけとして、私がインド滞在時にマザーテレサの家でボランティアをしていた時に出会った人に「岡本くんは何ができるの?」と聞かれた事がありました。当時の私は言葉に詰まりながらも「何ができるか分からないですけども、何でもやります。何でもできます。」と答えました。それを聞いた彼から「何でもできます、何でもやります、っていうのは、何もできないのと一緒なんだよね。」と言われた事が、今でも非常に印象に残っています。

マイクロクレジットは「金融」を使って「貧困」という課題を解決しています。私もそういう事をやりたいのであれば、まず自分自身に力をつけたいと強く思い、日本に帰国してからは会計士を目指しました。最終的に会計士試験に合格するには3年かかり、非常に苦労も多かったです(笑)

 

公認会計士試験に合格し、企業再生の仕事へ

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児島:それにしても会計士試験に合格されたのは凄いですね!その後は、まずは企業に就職されたんですか?

岡本:その後は就職して、会計士しかできない監査という仕事を経験し、その後、企業再生の分野で仕事をしていました。そして、30歳になる頃、企業再生の仕事は社会的意義も感じられたし仕事も順調でしたが、「そもそも、僕は何をやりたかったんだっけ?」と考えるようになりました。その頃から、よくバングラデシュでの出会いを思い出すようになっていました。

ちょうどそんなタイミングで、SVP東京と出会い、社会企業と協業している人々の姿を見て、自分が本当にやりたかった原点を思い出しました。そして、SVP東京に出会った翌々月には本業を持ちながらSVP東京の仕事や投資先を手伝い始めました。その後SVP東京の投資先としてカタリバが選ばれ、私もサポートチームとしてカタリバに関わり始め、2010年からはカタリバの理事にもなりました。

 

当時は本業の仕事に忙殺されつつも、夜や週末の時間はSVP東京やカタリバの理事として活動し、私にとってソーシャルセクターの活動が自分にとって本当にやりたい仕事だとだんだんと実感するようになりました。しかし、企業再生の仕事も充実していたため、ギリギリまで両方とも全力でやろうと活動していましたが、負担がかかりすぎて3ヶ月に一度は身体を壊しているような状況でした。

 

退職して11日後に東日本大震災が発生。その後、SVP東京とカタリバの双方でリーダー(経営者)に

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児島:かなり無理をされていたんですね…。そこから、どのように現在の岡本さんの状況に繋がるのでしょうか?

岡本:2010年の終わり頃に2年がかりの企業再生の仕事が一段落した時に、ふと「本当に好きなことをやろう」と考えるようになりました。当時の仕事をあと5年ぐらい続けていても正解だったのかもしれませんが、もし10年続けたとしたら、また同じように「あれ?この会社で偉くなるために、生まれてきたんだっけ?」と自問する自分を想像できました。

「一度きりの自分の貴重な人生の時間を何に使うのか?」という問いが重要だと思います。私はそれを自分自身に真剣に問いかけた時に、いま自分が信じる道に挑戦しようと思いました。そして、2011年の2月末に当時の仕事を退職し、独立しました。すると、退職した11日後に、まさかの東日本大震災が起こりました。

 

そして、ちょうど震災直後のタイミングで、当時のSVP東京の代表だった創業者の井上さんが次のステップに進むために渡米して代表を離れることになり、2011年の4月からSVP東京の代表を私がつとめる事になりました。
さらに当時から理事を務めていたカタリバの代表の今村さんは、すぐに現地の東北に向かい活動を始め、今村さんの代わりに結果として私は週に4〜5日ぐらいカタリバの仕事を手伝うようになりました。そして、震災から一ヶ月後の2011年4月末に今村さんと一緒に石巻に訪れた際に、カタリバの事務局長になってもらえないかという打診を受けました。

私もSVP東京とカタリバの仕事をする事を考えて当初独立したわけではなかったので、当時は正直に言って迷いました。しかし、ソーシャルセクターを盛り上げてゆくために独立したという軸はぶれていなかったので、今後よりたくさんの人がやりがいを持って働いていくためにも、まずはどっぷり現場に入ることを決断してカタリバの事務局長も引き受けました。

 

ソーシャルセクターの活動が生み出すインパクトの桁を変えて、次のフェーズへ

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児島:いま岡本さんがソーシャルセクターで活動されている中で、課題に感じていることはありますか?

岡本:SVP東京もカタリバも共通ですが、いかに「インパクトの桁を変えて、次のフェーズに行けるか」ということです。

まず、SVP東京は代替わりをして新しく組織基盤を創った3年間を経て、いま次の挑戦へ踏み出す4年目を迎えているフェーズです。次のフェーズとしては、全国に担い手を増やし、活動を広げていきたいと考えています。まさに今年、東北エリアに「SVP東北」が誕生しました。社会企業は東京だけにあるわけではないので、様々な課題に立ち向かう日本全国の社会企業と協働したいと思っています。そしてSVPにパートナーとして参画した個人は、社会起業家との伴走を通じて「当事者」になります。いま世の中に足りていない「当事者」を増やす、というミッションもSVPは掲げていますので、東京で新しい挑戦をしつつも活動を全国に広げていくフェーズだと考えています。

 

また、SVP東京では投資協働先団体の組織基盤の強化を一つの指標にしています。想いはあるけどリソースが足りていない社会企業に対して、SVP東京が協働して戦略やリソースを提供することで組織基盤を強化し、その後の飛躍的な成長につながるケースが多くあります。SVP東京では過去に約3,000万円ほどの資金を投資していますが、投資協働先の社会企業の規模は合計で約20億円程の事業規模に成長しています。もちろんSVP東京の投資が全ての成長に繋がったとは考えていませんが、組織基盤の強化があったからこそ成長につながり、様々な課題を解決できるようになると考えています。

 

活動の成果を明確に評価することが、さらに大きなインパクトへと繋がる

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児島:カタリバについても、同様の課題をお持ちですか?

岡本:カタリバは現在、事業規模で4億円、職員数で65名(インターンを含めると100名強)までに成長しました。そんな中、さらに様々なリソースを獲得し、インパクトの桁を変えてゆくために、あらためて成果にこだわることが必要だと考えています。

「カタリ場」を年間5万人の高校生に届けていて、7千人の大学生が関わっているという事実は成果の指標の一つになると思います。評価すること自体が目的ではないのですが、様々なリソースを集めて、さらに大きなインパクトに繋げるために、成果にこだわってゆきたいと考えています。

 

約1,000兆円を超え、将来に引き継がれる日本の借金。日本再生にはまず「当事者」を増やすこと

図1:日本の政府債務残高と債務残高対GDPの推移

児島:岡本さん自身が感じている課題意識についても教えてもらえますか?

岡本:私は様々な問題の根本は人と人との”関係性”だと考えています。やはり社会を変えるのは人です。人が「当事者」に変わっていくことが重要だと思っています。それは私が以前の企業再生の仕事をしていた時に実感しました。企業再生が必要な企業は、まずは財務を健全にして事業計画を明確にすることは入り口として大事なのですが、根本的には、そこで働く人の意識と行動が変わらないと本質的な解決には至りません。

 

これは今の日本の状況も同じだと考えていまして、日本の借金は約1,000兆円を超えて、企業でいうところの「再生フェイズ」にあると言っても過言ではありません。今のままだと、未来の世代にに莫大な借金を引き継いでいくことになります。そこを根本的に変えるには、やはり人が変わる必要があるし、「当事者」を増やしていくことが必要だと考えています。

私自身、こういった大きなことを目指しているからこそ、リーダー(経営者)としての自分自身の在り方が問われると思っています。自分自身がクリアでなければならないし、自分自身の器が上限になることも感じているので、非常に難しいチャレンジですが、自分の器を広げていくことが課題だと認識しています。

 

未来に向け、一人ひとりが社会に与えるインパクトを拡大させよう

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児島:2020年頃の未来に向けて、目指していることを教えてください。

岡本:SVP東京としては、より多くの人・投資協働先をサポートできる関係をつくっていき、当事者意識を持つ個人を増やしていきたいですね。SVP東京だけでできることは限られていますので、生態系として周りと連携していきながらインパクトを拡大させる活動をしていきたいと考えています。いかにセクターを超えるかということも重要です。

カタリバとしては、日本全国の地方における教育の課題についてアプローチしていきたいと考えています。2020年には、被災地や首都圏だけでなく日本全国の地域にカタリバの活動を広げていきたいですね。

2020年には私自身は42歳になります。私にとって40代は勝負どころだと考えていまして、よりインパクトある仕事をしたいですね。そして、より多くの人がソーシャルセクターに関われる環境づくりも目指したいと考えています。

 

児島:最後に「一度きりの自分の貴重な人生の時間を何に使うのか?」という問いの答えが出せずに、まだ一歩踏み出せていない人に向けてメッセージをお願いします。

岡本:よく相談を受けるんですけど…、まず「焦るな」と言っています。「一度きりの自分の貴重な人生の時間を何に使うのか?」という問いには、そんな簡単に答えは出ません。私もソーシャルセクターが必ずしも、全ての人にとって良いとは思っていません。

本当にその人がやりたいこと・ワクワクすることが、その人が一番社会にインパクトを与えられることだと思います。それを見つけて欲しいし、忘れないでいて欲しいです。そしてそれが見つかったのなら、やりましょう。大丈夫だから。

 

レポーターから一言

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岡本さんの話を聞いて、私自身も「一度きりの貴重な人生の時間の使い方」について考えさせられました。

現在はSVP東京とカタリバの双方リーダー(経営者)として活動している岡本さんの人生の使い方は、岡本さんが何度も自問して、実際に行動を起こして辿り着いた岡本さんにとっての「答え」なのだと思います。

営利・非営利の活動を問わず、私たち一人ひとりが「一度きりの貴重な人生の時間の使い方」についての答えに向かって一歩ずつ活動していく事が重要なのかもしれませんね。

 

 

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